Can't stop xxxing.

 そろそろ読んだことのない人を読んでみようと思い立ったので、いつもの棚(いや、その時々で本屋は違いますが)でよく見る人のデビュー作をさくっと。…と思ってたらぐさっと返り討ちな感じです。そういえば西尾維新とは噂に聞くタンデムローター仲間だよね。煙か土か食い物 / 舞城王太郎[amazon.co.jp]。

 疾走独白ミステリィ。一言で言えばそんな感じ。確かに今までこんなスピード感のある小説は読んだことがなかった。もっと早く読めば良かった。そして物語の進行と同時に一人の男がありのままの自分をさらけ出していった。…それは裏を返せば、失踪毒吐くミスリード。ひとつ間違えば読者を置いてきぼりにしかねない勢いで、えげつないくらいに人間の内面を畳み掛けていることにもなる。でもそこでギリギリ裏返らない絶妙のバランス感覚がこの本には備わっている。と、思う。

 途中で笑いがとまらなかったし、最後まで読むのを停められなかった。そしてこの物語の主人公であるところの奈津川四郎は最初っから考えるのをやめられなかった。微睡みの中でさえ。パターンを考え暗号を考えトリックを考える。犯人について、自分について、セックスについて、兄弟について──その先にある家族について。そうやってたどり着いたところには何があったのか。そこで得たものは果たして真実正しいのか。それは読んでのお楽しみ…。