ついに完結。

 塩野七生の『ローマ人の物語』がついに完結したそうで。
 この1年で、「ローマ人」以外のほぼ全著作を読んでしまったので、そろそろ取り掛かる時が来たということだろうか。…ほぼ、というのは、歴史叙述もの以外の著作が苦手で、2、3読んでいないものがあるからなのだが。その苦手な理由を一言で表すと、「好ましい・好ましくない人間像を歴史的観点を通して叙述したものは面白いが、個人的好き嫌いから男性・女性を批評するのは読んでいて面白くない」ということになるだろうか。もしくは主観を装った客観性と、客観性を装った主観との違い。
 と、批判めいたことを書いてしまったが、ヴェネツィア共和国の盛衰を描いた『海の都の物語』は、ヴェネツィアで生まれた特異な政体と経済体制が、時代の波をどう乗りこなし、また翻弄されたかを描いた名著だと思うので読んで損はないです。『わが友マキアヴェッリ』と『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』は、同時代に生き、 共にイタリア統一という目標(夢・理想)を抱きながら、力(ヴィルトゥ)を手に入れたものの最終的には運(フォルトゥーナ)に押し流された男と、その男に光を見た力なき文人の力強い思想の対比が面白い2冊。
 話は変わるけども、チェーザレについては惣領冬実が『チェーザレ*1というストレートな題名の漫画をモーニングあたりで連載しているので、そっちも併せて読むと面白いかも。今のところピサとフィレンツェが主な舞台なので、見たことある風景が出てきて個人的にも楽しい。

*1:2巻まで既刊