スカイ・クロラ:変化を嫌う世界の中の、変化に嫌われた存在。

 今日は早めに仕事を切り上げて(といっても21時だが)、レイトショーで「スカイ・クロラ」を上映している映画館「新宿バルト9」へ。終映時間は終電後なので、こういう時に自転車は便利。運動不足の解消にも。今後もたまに利用しようと思った。
 以下、ネタバレなし(のつもり)のおすすめポイントなど。*1

ストーリーに関係のないおすすめポイント1

 エースコンバットシリーズが好きなら空戦シーンだけでも見て損はない。加速、ロール、急減速、上昇、急降下。風を切るプロペラと焔の弧を描く機銃。断続的に入る交信。数十機の戦闘機が乱れ合いながらドッグファイトを繰り広げる中、粛々たる侵攻こそが任務とばかりに前進する対地攻撃機。そして、「絶対に墜とせない」エース。

物語のキーワードは「変化」との距離

 戦闘、事故、その他の要因によって致命傷が加えられない限り、ティーンエイジの外見のまま変化せず死なない「キルドレ」たちが「管理された戦争」を続ける平和な世界。スカイ・クロラの主要な登場人物である4人のキルドレは、それぞれ「変化」に対するスタンスの違いから行動し、それが物語をドライブしていく。
 変化の切っ掛けを見出しあらゆる手段を以て変化を求める一人、変化を拒絶した日々を変化のないままに受け入れて楽しむ一人、変化の糸口に気付きながらも独りでは前へ進めない一人、変化のないかのような日常の中にも確かに存在する変化を肯定する一人。
 平和で安定した世界は変化を嫌う。しかし、ヒトは年齢を重ね、ゆっくりと変化していく。それは避けられない。年々歳々花相似、歳々年々人不同。…ただし、変化を嫌う世界の中の、変化に嫌われた存在である、キルドレを除いて。物語上、彼らの行動様式は、主観的には「変化のない」日常を送っているヒトが、どのように行動するのかを凝縮したものとなる。いや、ならざるを得ない。逆に、老いとは無縁のキルドレ自身の主観では、薄く引き伸ばされた遷移なのかもしれないけれど。
 観終わった後、誰のように生きたいと思うだろうか。そして誰と生きたいだろうか。自由とは呼べない空を這う彼らは、それを問うている…の、かも、しれない。

ストーリーに関係のないおすすめポイント2

 原作者である森博嗣のローマ字表記が「MORI Hiroshi」だったり(他の人は「Mamoru Oshii」のような表記)、空冷のオープンタイプ・ポルシェが登場したり、発音でも明らかに言葉尻の長音を削っていたりと、原作(および森博嗣作品)読者なら思わずニヤりとするポイントが散在。…しかし、読み返さないと原作の細部をすっかり忘れている自分。

そして、まだ「スカイ・クロラ」を観ていない人へ

 映画は「最後まで」座って観ましょう。

*1:もしネタバレだと思う箇所があったら教えてください