Don't Stop Me Now.

 目の前に本がある。
 出版されるのを待ち望んでいた小説だ。
 …どうやら上下巻の分冊で、下巻は再来月に出るらしい。
 とりあえず買う。いやむしろ買わずには居られない感じ。

 家に帰って、早速それを鞄から取り出す。わくわく。
 表紙を穴が開くほど眺めてみたりみなかったり。
 そして表紙を捲る。カラーイラスト発見。すかさず脳に焼き付け。
 イラストから内容をあれこれ想像しつつプロローグへ。
 ………読み始めて数ページで衝撃の事実発覚!
 とても上巻だけでは解決されそうもない…。

 という状況があったとして、どうやら世の中には上巻だけでも読む人間と、下巻が出版されるまで上巻を封印する(或はしようとする)人間がいるらしい。勿論(?)自分は前者ですが。まあそれが良いとか悪いとかではなくて、小説を一度読み始めると止まれない、とそーゆー単純な理由です。
 ここで後者の例として以下の日記を引用させて貰うことにする。

■アリソン3上巻
2p読んでストップしました(ぇー
ていうかさらっと衝撃的な事実を書かないでください。泣きます
泣きますよ?

ヴィルー!!11・゜・(つД`)・゜・。
まぁ先生の小説は最後まで読まないことにはわからないんですが…
下巻そろえてからじゃないとあまりにもつらいっぽい
    from:向日葵の咲く丘:嘘日記(3/15)

 …えーと、じゃあ早速ここで上巻のあらすじを…書いたりは流石にしません。そんなことしたら犯罪です。何処の誰が読んで下さるとも限りませんし。
 以上の例──といっても名もない自分と引用させて貰った観城はるか氏の二人しかサンプルがない訳だが──からすると、あの状況で続きを読む人間と、読まない人間、この両者を残酷にも(?)選別するものは、一刻も早く少しでも先を知りたいという欲求と、まとめて読むことで確実に解決に辿り着けるという安心感のどちらをより優先するのか(その二つの感情は誰にでも両方あると思う)という点に尽きるように思う。
 ……まあ良く考えたら、想像する材料だけが中途半端に揃った状態であーでもないこーでもないと想像するのと、材料のない状態で同じように悩むこととの間に、物語の結末を語れないという点において、どれだけの違いがあるのかと言われればそれまでのような気がしますが、それでも自分にとって、目の前にある面白い小説の存在を無視することは、苦悩や焦燥をもたらしこそすれ、救いとはならないのです。
 結末まで辿り着けない不安や辛さよりも、私は刹那の解放を求めます。紙よ、あなたは何と残酷な存在なのでしょう…。