Giornata 2.

 この日の空は朝からどんより。昨日張り切って歩いたので足下もどんより。
 今度はカメラ用のUSBケーブルをどこに置いたか分からなくなったので、またもや20分くらいロス。…まあそれでも一日目と同じく9時半くらいに出発。とりあえずドゥオモの方へ…行ったけれど入らず。すっかり堪能したつもりになっている。クーポラの修復工事の様子(fig.1)を見ながらドゥオモのある広場の奥の道を南下していくと、フィレンツェで一番古い教会だというバディア・フィオレンティーナ教会の斜向いに何やら立派な建物が。(fig.2)Tribunale…えーと、裁判所らしい。その隣(バディア・フィオレンティーナ教会の正面)にバルジェッロ*1国立博物館があったので入ってみる。
 中にはドナテッロの優美な「ダヴィデ」や、サン・ジョヴァンニ洗礼堂の北側の門の装飾をかけてブルネレスキとギベルティが競った「イサクの犠牲」のオリジナルが飾ってあって、普通に美術館としても楽しめる一方で、近代までの武具を幅広く集めたコレクション(日本の長刀まであった)など資料的価値の高いものも多く収蔵されていた。他にも、題材は勿論のこと形や様式も実に様々なレリーフ群で飾られた中庭の壁面(fig.3)は、ずっと眺めていても見飽きないくらいだった。
 博物館を出た後は、「神曲」を書いたダンテの生家(閉館して改装中)を回り、ナターレの準備が着々と進む街並を眺めながらシニョリーア広場へ出て、今日はちゃんとパラッツォ・ヴェッキオの中へ。エントランスは観光客も市庁舎に用がある人も一緒で、観光客は中に入ってから観光用区画のチケットを購入する。そうして共和制時代に市民*2議会が開かれていた五百人広間(fig.4)の厳粛な雰囲気を楽しみ、謁見の間や百合の間の装飾に感心したり地図の間の地図コレクションを眺めたりしていると、マキアヴェッリの部屋があった。…ちょっとマキアヴェッリ先生に昨今の国際情勢について聞いてみたかったりもしたけれど、ご挨拶だけにする。
 そして、再び何となくサンタ・クローチェ教会前へ。(fig.5)今日も市が立っていたので、昨日は空腹で見る気が起きなかった分ぐるぐる回って見てみる。サラミやチョコの量り売りにアクセサリーの屋台、ボルトやナットで作られた良く分からないオブジェを売っている店まで…いろいろあった。最後にドイツの人(多分)がホットドッグのクラウト乗せを売っていたので、ひとつ買って教会を見ながら昼ご飯にした。(fig.6)クラウトの酸味が適度に利いてて美味しかった。
 それからしばらくは中心部を迂回するように、北西方向に街をうろうろ。ブオナローティ邸(でもミケランジェロは住んだことがないらしい)の前を通り、カラビニエリ(軍警察)の本部(fig.7)を見つけて、最終的にフィレンツェで最も美しいといわれるサンティッシマ・アンヌンツィアータ広場(同名の教会の広場)で一休み。…そういえばここまで書いてなかったけど、フィレンツェの有名どころの広場にはなぜかことごとく個性的な牛のオブジェ(fig.8,fig.9)が数体ずつ置いてあった。何かのイベントかもしれないけど詳細は不明…ってこれ[cowparade.com]か。世界中の都市を順番に舞台にしているパブリックアートの展覧会らしい。
 そこからサン・マルコ広場へ抜け、平日は14時前に閉館してしまうサン・マルコ美術館を横目にミケランジェロの「ダヴィデ」のオリジナルがあるアカデミア美術館へ。行列が出来ていないのはいいけど、そのせいかちょっと入り口の場所が分かりにくい。オリジナルのダヴィデは、光に柔らかく包まれるような展示の効果かもしれないが、写実的な人間観察から得られた理想的肉体の像であるばかりか、内的な意志の輝きも見る者に感じさせる、まさにイタリア・ルネサンスの精華ともいえるアウラ*3を放っていた。
 アカデミア美術館を出てからは、サン・マルコ広場からチェントロへ向かうカヴール通りを南下して、メディチ・リッカルディ宮の前を通って右手に折れると、サン・ロレンツォ教会の前に出る。(fig.10)この、メディチ家菩提寺でありながら未完成のファサードを持つ教会の広場でくつろいでいる犬(fig.11)を撮りつつ、その裏手にあるメディチ家礼拝堂へ屋台の裏を通りながら回り込むと…盛大に修復工事中。それでも内部、特に君主の礼拝堂は色とりどりの大理石やその他の石で装飾され、訪れる人間を圧倒するような威厳を備えていた。さらに、ミケランジェロがデザインを任されたという新聖具室の壁面の、装飾が施されていない部分には、ミケランジェロのものと思われるデッサンがあった。
 一通り見終わってから礼拝堂から出ると、サンタがカラビニエリの警官と何やら話し合っているのを目撃(fig.12)…したのは面白いからいいんだけど、ここにきて二日目にして電池切れを感じたので、ひとまずホテルに戻って休憩。そしてもう何か見て回るのはやめて、どこかのカフェでゆっくりすることに決定。ガイドによるとシニョリーア広場に面した「リヴォワール」という老舗のカフェテリアが良さそうなので、夜の街とシニョリーア広場(fig.13)を少し散歩してからリヴォワール(fig.14)に入って、チョコラータを飲みながら持って来た本を読んで、二日目は終了。今日もぐっすり。

*1:バルジェッロとは司法長官のことで、任期ごとにフィレンツェ外から招聘されていた。

*2:各分野の組合に加盟している商人や親方、法律家などだけが市民資格を所有していた。

*3:ベンヤミン的な近代芸術の唯一性が放つ雰囲気のこと…だと思ってください。